ラ、ラ、ラ、国民総狂躁状態

ズン、ズン、ズン………それ行け、やれ行け
チキ、チキ、チキ……ほら、ほら、こんなにたくさん
チキ、チキ、チキリン………ここにもこんなに
チキ、チキ………こっちは、3時間待ち
チャカポコ、チャカポコ………すごいぞ、ずごいぞ、
チンチキ、チンチキ………うまいぞ、うまいぞ、食べなきゃ損、損
チキドン、チキドン……ほら、ほら、みんな楽しそう
ドカ、ドカ、ドッカン…急げ、急げ。残りはわずか
ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ、…さぁ、さぁ、さぁ、さぁ、乗り遅れるな
ンチャ、ンチャ、ンチャ、チャリラリラ~ 遊べ 遊べ、現実(いま)を忘れて遊べ

 今日も、テレビ、雑誌、SNSには、
朝から晩まで、国内はおろか、世界中の
豪華な食事、風光明媚な土地、
流行(はやり)の服や装身具、
豪華なマンションや建物、
次から次に新規に登場する仮想空間のゲーム、
競輪・競馬・競艇・宝くじ…あれもこれもみなギャンブル、
年中切れ目無く続く各種実況中継で、絶叫するアナウンサーたち
あっちの局もこっちの局も人気芸人や俳優たちが、ゾロゾロと散歩する様をダラダラ流すだけのただの時間つぶしの番組。
 そうかと思えば、
タワマン建設のために、緑の木々を伐採したり、街を巨大な人工物で埋め尽くして、街全体から自然を奪っていく大企業について行けば、どこか素晴らしい次(未来)の世界に連れて行ってくれるというイメージを「……次いこう」「次いこう」と連呼してすり込むCM

 これは一体なんなのか。
 それらは、人々を駆り立て、あおりたてて、人々を無駄な消費・浪費に駆り立てるだけではないのか。
 それらは、自分以外の人たちは、毎日を面白おかしく遊んでいるのだという錯覚に人々を引きずり込むだけではないのか。
 まるで、これを知らないあなたは、世の中からひどく遅れてるというように。
 これをやらないあなたは、ひどくみんなから外れてるというように。
 あなた以外の人たちはもう、みんな知ってるし、やってるんだよ、知らないのはあなただけというように。

キラキラ、ピカピカの華やかな画面と
軽快なリズムの音楽に乗せて
手を変え、品を変え、煽り(あお)に、煽る。

やがて、人々は、真面目にコツコツ働くことを馬鹿らしいと考えるようになる。やがて、人々は、画面に登場するかっこいい男たち、優雅で優美な女たちを真似た服を着て、その仕草を真似て歩き、
「インスタ映えするかどうか」「TikTokでバズるかどうか」そういうことに最大の価値を求めるようになる。

 ズンチャチャ、ズンチャ、ズンチャチャ、ズンチャ
 私も取り残されたくない、
 私もあの画面の中の楽しそうな人たちのように幸せに暮らしたい
 私も、私も、私も…………
 そうやって、人並みの幸せを求めただけなのに、
 残ったのは、とうてい払いきれない多額の借金

ズンチャチャ、ズンチャ、ズンチャチャ、ズンチャ
 昨日また派遣の仕事を切られてしまった。
 明日からどうやって暮らそう……
 とぼとぼ歩く耳に入ってくるのは
 政党の裏金が何億、半年で取り壊す施設建設費に何百億、開催の気運醸成に 38億…
自分とはまるで違う世界に住む人たちの話の数々


 
おかしくなっているこの国。
人々が正常な判断をできなくなっているこの国。
10分前の番組で、万博開催を支持しないという人が多数を占めているという世論調査の結果に、「一度決めたことでもやめる決断をすることが大切だ」とMCやコメンテーターが揃って語っていたのに、次の番組では、あのおかしな形の「マスコット・キャラクター」を登場させて恥じないテレビ局。
まさに38億の気運醸成費の効果。
その異常さ異様さを、そのままスルーしているこの社会。
     
 ズンチャチャ、ズンチャ、シャカシャカ、ズンチャ……いいじゃないか、難しいことは抜きにして、面白おかしく暮らせば。
番組は、それまで報じていたシリアスな情報を忘れたように、南国の海でキャッキャと遊ぶ女の子たちや、観光地を埋める人の波を報じる。
 
この国民総狂躁状態から目覚めなければ、
 彼らの「つぎに行こう」に従っていたら、 
 そこに待っているのは、 
 1945年8月の現実の一層ひどくなった再来なのだ。

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